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CW用アクティブオーディオフィルタの検討

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ダイレクトコンバージョン受信機の復調直後や短波ラジオ等に後付けするCW用アクティブフィルタを検討してみました.昔,愛好者3号用のアクセサリとしてFCZ研究所の27mHインダクタを使ったパッシブBPFを作りましたが,そのアクティブフィルタ版です. 原型となるLC BPFです.M結合型を用いるのは,高域側を急峻に減衰させるためです.中心周波数860Hz,帯域幅450Hzで設計していますが,実際のフィルタ特性はインピーダンス反転回路による直並列変換のためズレます(cf. 4次バタワース型LC BPF設計スプレッドシート ).この回路定数でSpiceシミュレーションすると−3dB遮断周波数が602Hz/1059Hzとなり,中心周波数799Hz,帯域幅457Hzになります.私は800Hzが好みなので,これで進めていくことにします. この回路の節点方程式と回路定数をGeminiに投げて伝達関数を計算させ(節点方程式はLaTeXの数式記法で与え,Geminiにタイプセットさせて認識させた),その分母多項式から2次区間のパラメータを求めました.ですが連立方程式の解や分母多項式の2次多項式への分解,2次区間パラメータの計算に間違いが多く,LC BPFとのフィッティングが終わるまで何度も再計算させることが必要でした(フィッティングを行った理由はまさにここにあります.AIが出した結果を鵜呑みにしてはいけない:特にこの手の計算問題では).フィッティングは2次区間パラメータを用いてPythonで計算した周波数特性とLC BPFのSpiceシミュレーション結果を同一グラフ上で重ねて行いました.フィッティング後のパラメータは表のとおりです. Stage 共振周波数 Q 回路 1st 682.9Hz 2.15 多重帰還型BPF 2nd 1006.6Hz 3.16 Sallen-Key LPF 回路図です(片電源対応にしていない原理図).キャパシタはnF単位で書いていますが,初段は0.068μF,後段は0.047μFです.抵抗をE24系列に丸め...

4次バタワース型LC BPF設計スプレッドシート

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4次バタワース型LC BPFを設計するスプレッドシートです. 帯域幅,中心周波数及び終端抵抗を入力すれば,M結合型(高域を急峻に遮断)とC結合型(中心周波数を軸に対数周波数軸上で対称)の素子値を計算します. 低周波はもちろん,高周波でも使うことを想定していますので,帯域幅と中心周波数はHz単位で入力するようになっています.計算結果の単位もΩ,H,Fです(値は指数形式). 一点注意事項があります.このフィルタの素子値計算は2次バタワース型LPFに周波数変換(LP-BP)を適用した後,直列枝のLC直列回路をインピーダンス反転回路(虚ジャイレータ)を用いてLC並列のシャント枝に変換しています.このインピーダンス反転回路がLP-HP変換の周波数マッピングを少し変更してしまいますので,実際のフィルタ中心周波数と帯域幅は設計値で与えたものから変わることがあります( Q の小さな広帯域のフィルタで顕著です).SpiceのAC解析で特性を確認されることをおすすめします. インダクタにタップをとっていたり,2次巻線を用いるような場合は,終端抵抗値は実際の値に巻数比の2乗を乗算したもの(i.e. \(n^2 R_\text{actual}\))を指定します.例えば1:3でステップアップしているのでしたら\(3^2R = 9R\)を入力します. こちらのリンク を開いてお使いください. ライセンスは CC BY-NC-SA 4.0 International です. 【文献】柳沢健,神林紀嘉,フィルタの理論と設計,産報出版,1974  AR de JH5ESM VA

TTC015B/TTA008B プッシュプルアンプ(2):ブレッドボードによるC級PP予備テスト

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ブレッドボードに回路を組んで,3.5MHzでの予備テストを行いました. 回路図です. 出力トランスのトリファイラ巻きはよじらずに平行巻きとしています.トランジスタから見た負荷は約5.5Ω(=50Ω/9)ですので,入力インピーダンスは数十Ω程度を見込んでいます.そのため入力段はSG直結とし,無整合としています. 入出力特性です.信号源の制約で,最大入力は200mW(23dBm)です.高調波は第5次までデータを取っていますが,ここでは割愛しています. 入力6dBmが50Ω系で振幅0.626Vになり,ここからトランジスタが増幅動作を始めていることがわかります.最大入力時に1.9Wが得られており,目論んでいた2W級のC級SEPPアンプができそうです.この実験では回路をずっと動作させていたので,発熱に起因する出力低下が若干あります. 高調波ですが,最大入力時に2次が−28dBc,3次で−16dBcですから,どちらも−50dBcにまで抑圧するには5次バタワースLPF(または定K型LPF 2段)が必要でしょう. 基本波出力とコレクタ効率の特性です. 1.9W出力時に56%,このときの入力電力は3.34Wでしたので,トランジスタ1本あたりの損失は0.72Wとなります.TTC015B/TTA008Bの許容コレクタ損失は1.5Wで,データシートからは周囲温度90℃までは放熱器なしで使えそうです.放熱器は水谷電機のSP111Kあたりで良さそうです( 千石 にあります). 【参考】23dBm入力時のスペアナ及びオシロ波形(CH1:出力,CH1:入力)です.スペアナには20dBのアッテネータを通して信号入力しており,マーカーデータに補正値22dBを足したものが実際の値となります(このスペアナ画面はコールドスタート時に記録したもので,この時は約2.1W出力になっています). AR de JH5ESM VA

TTC015B/TTA008Bプッシュプルアンプ(1):バイアス回路

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【2026.02.22 Update】  オーディオアンプを期待した方には申し訳ありません.このページはアマチュア無線機用の終段増幅器に関するものです. 以前からTTC015BとTTA008Bを使ってQRP送信機用のプッシュプル終段増幅器が作れないかと考えておりましたが,ようやく着手しました.まずはバイアス回路からです. 今回はクロスオーバ歪をなるべく小さくして高調波成分を低減するためにB級ないしはAB 1 級を考えていますが,リニアアンプは想定していません.CW用です. 回路図とブレッドボードです.TTC015B/TTA008Bのリード線はEIC-301/701に入らなかったので,ピンヘッダにはんだづけしてから挿入しています(EIC-801/102なら何とか入る). 12V電源でのアイドル電流実測値は8.42mA(電源投入直後は7mA程度,熱平衡状態に落ち着いたところが8.42mA)でした.また\(Q_1\)及び\(Q_2\)の\(V_{BE}\)は,それぞれ0.620V,0.618Vでした. リニアアンプやオーディオアンプを考えるのでしたら,アイドル電流をもっと流したほうがいいでしょう.   次は出力2Wクラスの実回路を実験することにしましょう.30MHzくらいまではテストしたいので,ブレッドボードではなくユニバーサル基板に組まなくっちゃ. 【2026.02.20追記】 バイアス抵抗を何種類か変化させて測定し直してみました.測定日が異なりますので,4.7kΩの電流値は若干変わっています.3.3kΩ時のアイドル電流は,揺らぎが少し大きかったので2桁精度にとどめています.CW用なら6.8kか10kΩで良いかもしれません. なお3kΩ未満ではアイドル電流が時間とともに上昇する傾向を示したので,NGです. \(R_\mathrm{B}\) / kΩ \(I_\mathrm{idle}\) / mA \(V_\mathrm{BE1}\) / V \(V_\mathrm{BE2}\) / V 3.3 20 0.641 -0.639...