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TDK H5C2 T20x5x10の伝送線路トランス評価

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知人からTDKの H 5C2 T20x5x10 というトロイダルコアをたくさんいただいたので,伝送線路トランスを作って評価してみました.このコア材は初期比透磁率が \(\mu_i = 10,000\) と非常に大きく,少ない巻数で大きなインダクタンスを得ることができます. 評価したのはバイファイラ巻きとクワドファイラ巻き(4本束ねて捩った線路を巻きます)それぞれ10回巻きです.巻線には0.4mm径のラッピングワイヤを使用しました.クワドファイラ巻きは4〜5Wクラスのプッシュプルアンプ出力トランスに使うことを目論んでいます. 測定系は次のとおりです.ネットワークアナライザ(あるいはTG付きスペアナ)なんて持っていませんので,50MHzまで出力できるファンクションジェネレータとオシロスコープでの測定です: 評価結果は上のとおりです.出力電圧 \(V_2\) を電力換算し,ファンクションジェネレータ出力(20dBm)との差を取りました. この結果から,バイファイラ巻きは50MHz程度まで実用的に使えそうです.一方クワドファイラ巻きの方は実用的には10MHzまで,30MHz以下ならなんとか使えそうですが50MHzはちょっと厳しいかもしれません.入力側の電圧(\(V_1\))を見ていると,10MHzを超えると反射に起因する振幅の変動がありました.【追記】巻数を減らせば少しは広域が伸びるかも. このフェライトトロイダルコアはTDKのWEBサイトでは「新規設計非推奨」となっています.フェアライトの#75材が \(\mu_i = 5,000\) ですので,似たような感じに使えるのではないかと思います(5975000601 or FT-82-75あたりでしょうか).

esmKeyer222:45円PICマイコン(10F222-I/P)でシンプルエレキー(実機製作編)

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Initial released on 29 June, 2024 Updated on 18 July, 2024:サンプル動画を末尾に追記 esmKeyer222 の実機製作編です. 回路図から起こした秋月C基板の実体配線図です(上:部品面,下:はんだ面): 電源は,結局単4乾電池2本にしました.基板上下の黒い長方形が単4型電池ボックス(ピン式)です. 実装写真です: 手元に適当なケースがなかったのと,速度変更用タクトスイッチの頭をどうやってケースから出すかというのでしばらく悩み,C基板をカットしてパネルとして立てる方法を採用しました.これにより,電源スイッチも基板用を使うことができます.リア側も同様です.L型ピンヘッダを用い,基板にはんだ付け接合して垂直に立てます.ピンヘッダは配線としては使わなかったのですが,今考えると電源スイッチとタクトスイッチの配線はこれ使えば空中配線が減ってよかったですね(苦笑): フロントパネル リアパネル 出力端子には,テストピンジャックを使うことにしました:キー出力がフローティングになっているのが売りですから. パネルを立てた状態です.ピンソケットは用いず,直にはんだ付けしています: PICマイコンの脱着は,フロントパネルから3.5mmステレオジャックを外して行います. 屋内使用ならこのままでも良さそうですが,持ち運び用には上下をC基板で挟むことにしました.ネジはM3×35mmを用いています: なんとか形になりました.大きさは中型のマウスくらいでしょうか.タカチのSW-75と同じくらい(SW-75より高さが5mm高いです)と想像してください. micro:bitモールストランシーバ で動作させているサンプル動画,符号速度はデフォルト(中)です.

ローディングアンテナ(中間部負荷型)の設計方法 ―スミスチャートを使ったローディングコイルと調整ヒゲの算出―

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Initial released on QSL.net: 29 Dec. 2005 Republished with revision: 23 June 2024 1. Introduction ローディングコイルを使ったシングルバンド,2バンド,あるいはマルチバンドアンテナの設計を解説した資料はあまり多くありません.シングルバンドの場合はとにかく作ってみるという手法もとれますが,マルチバンドで使ったり,あるいは設置スペースの制約条件があるような場合は闇雲にやるわけにもいきません. 本稿は2バンド用ローディングアンテナを題材に,スミスチャートを使ってローディングコイルの位置とインダクタンス算出,エレメント長の決定,調整ヒゲの長さ決定を解説することを目的としています. なおスミスチャートの使い方については本稿の範囲外ですので,別途適当な資料でご確認下さい. 2. 設計例題 設計例題として,Fig.1に示すような3.5/10MHz用水平アンテナエレメントを考えることにします.これはダイポールの片側と考えて下さい.     Fig.1 A 3.5/10MHz horizontal element (half of a dipole antenna). エレメント\(L_1\)と\(L_2\)はそれぞれ10MHz用エレメント,3.5MHz用エレメントを,\(L_H\)は10MHz用の調整ヒゲを表しています. 本設計例ではすでに\(L_1\)と\(L_2\)の長さがそれぞれ7.42m,4.2mに決まっているものとします.\(L_1\)の長さは10MHzの\(\lambda / 4\)として,\(L_2\)は私のアンテナ展張スペースの制限で決まった値です. したがって,この設計例で求めるのはローディングコイルのインダクタ値とヒゲの長さ\(L_H\)ということになります. 3. ローディングコイルのインダクタンス エレメント\(L_1\)及び\(L_2\)がすでに決まっていますので,これを3.5MHzでの電気長(何波長に相当するか)に変換してスミスチャートにプロットします. \(L_1\)は計算すると\(0.087 \lambda\)となりますので(\(7.42 \times 3.5 / 300\)),スミスチャートの\(0\) Ωの位置(左端.ここが給電点ということ)から反時

BBC micro:bit V2を用いたモールス符号トランシーバ

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Initial released on QSL.net: 5 Oct. 2021 Republished with revision: 21 June, 2024   micro:bitを使ったモールス符号トランシーバです.見通しで140mまでの通達距離があります.発光信号付きでQSK動作です. デモ動画 では3VとPin1に接続した外部電鍵で操作していますが,ボタンAでも操作可能ですので,micro:bit V2だけで動作させることができます. 動画中のモールス符号はCaravanの1971年のアルバム“In the Land of Grey and Pink”に収録されている“Golf Girl”の曲中に入っているものです(あ゛,最後の“S”が脱字になってる orz). 以下,Pythonソースコード(ライセンス: CC BY-NC-SA 4.0 国際 )です: #  Morse Code Transceiver V2, featuring signal lamp and full QSK #  (c) 2021 by Cosy MUTO, Nagasaki Univ. (aka JH5ESM) #  Works with the BBC micro:bit V2 only #  CC BY-NC-SA 4.0 International  https://creativecommons.org/licenses/by-nc-sa/4.0/ from microbit import * import radio radio.config(group = 1) radio.on() pin_speaker.set_analog_period(1) mark = Image("09990:" "99999:" "99999:" "99999:" "09990:") key_old = 0 rx = 0 rx_old = 0 while True:     key = (pin5.read_digital() ^ 1) | pin1.read_digital()     radio.send(str(key))     rbuf = radio.receive()   

esmKeyer222:45円PICマイコン(10F222-I/P)でシンプルエレキー(計画編)

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Initial release: 20 June, 2024 Revised: 22 Aug., 2024 12F629で作ったベーシックエレキー(esmKeyer629) のメモリ使用状況を見ていると,機能を絞ってシンプルにすれば秋月電子で45円の10F222-I/Pでもできそうです(そのままではデータメモリが不足).機能の絞り方として速度を3段階に限定し,プッシュスイッチを押すたびに順次切換え巡回(中→高→低→中→...)するようにしました.短点優先,メモリなしはesmKeyer629と同じです. 回路図 回路図です(PDFは こちら ).キーイングトランジスタ Q 1 はフォトカプラでエレキーの主回路から絶縁してフローティングになっていますので,プラスキーイング・マイナスキーイングのいずれにも対応できます.ベース・エミッタ間抵抗は,キーイングトランジスタを確実にオフにするため挿入しています.キーイング電流が1mA程度でしたら, Q 1 と10kΩなしにフォトカプラのトランジスタを直接キーイング出力にしても良いと思います.電池は回路図上ではLR6(単3)と記載していますが,LR03(単4)で十分です.カメラ用リチウム電池(CR2とかCR123A)やボタン型電池(例えば,LR44×2とかCR2032とか)もあり得るかもしれません. スピードは50cpm/70cpm/85cpm(欧文暗語)の3段階としました.デフォルトは中速の70cpmです.符号発生の方法は esmKeyer629 の方に書きましたが, 短点は1ms,長点は3msの時間待ちを送信速度に応じた回数繰返しています.本当なら _delay_us() を用いて for 文を廻る際に費やす時間を1000μs,3000μsから差し引いて時間待ちを設定する必要がありますが,本機では省略しています. xc8のソースコード(ダウンロードは こちら )は以下のとおりです.ライセンスは CC BY-NC-SA 4.0 International です: /*  * File:   esmKeyer222.c  * Author: Cosy MUTO, JH5ESM  *  * Version 1.0, 20 June, 2024  * CC BY-NC-SA 4.0 International  *     https:

esmKeyer629:PIC12F629-I/Pを用いたベーシックエレキー

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Initial release: 18 June, 2024 Revised: 29 June, 2024 Note: 本機は計画とブレッドボードテストのみで実機化はしていません.実機化はesmKeyer222( 計画編 , 実機製作編 )で実施しました. 今さらという感もしないわけではないですが... 手元にあったPIC12F629-I/Pで基本的なエレキーを作ってみました.スクイーズ操作ではなく, EK-103/Z のような短点優先タイプです.(短点)メモリーはありません.現状はフォトカプラを除いた回路でのブレッドボードテストの段階で,送信機に接続したテストはまだ行っていません. 基本回路図です: U 1 がPIC12F629-I/Pです.GP5(Pin2),GP4(Pin3)及びGP2(Pin5)はプログラムで内部プルアップを設定しています.内部プルアップが信頼できないという方は10kΩ〜47kΩくらいで外部プルアップして下さい.クロックは内蔵4MHzオシレータをキャリブレートせずに使っています. キーイングはフォトカプラ U 3 で絶縁したPNPトランジスタ Q 1 で行うこととし,エレキーの回路を送信機から絶縁します(昔,トランジスタだけでキーイングした時に酷い目にあったことがあります:苦笑). モードスイッチはOFF(内部プルアップでH)が通常のキーイング動作です.キーヤ内蔵サイドトーンはスイッチでON/OFFできます. モードスイッチON(L)で速度設定モードになり,このときは連動スイッチで内蔵サイドトーンも動作させます.ただし,送信キーライン(フォトカプラに接続されるライン:GP0)は動作させません.短点一つを入力する毎に1wpm増加,長点一つを入力する毎に1wpm減少するようにしています.速度範囲は欧文暗語で5wpm〜20wpm(25cpm〜100cpm)の16段階です. 内蔵サイドトーンはLMC555CN( U 2 )による50%デューティ発振回路です.この回路定数(130kΩ,6.8nF)で約800Hzを発振します.4番ピン〜GNDにつながっている10kΩは,サイドトーンスイッチがどちらもオフの場合に発振を停止させるためのプルダウン抵抗です. 欧文暗語の送信速度に応じた短点時間の計算結果を こちら(Googleスプレッドシート) に示します.プ